ジャズのスケール、コード、テンション、借用和音など。私なりの解釈で構築した音楽理論の要点をできる限りシンプルにまとめました。
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登場人物
脳内にある自分の中のジャズ理論を見える化する試み。
まえがき。
ジャズを弾く、そのために必要な要素は多岐にわたりますが大きく分ければ下記の3つではないでしょうか。
(楽器が弾けるのは前提とします。)
- 音楽理論
- リズム・グルーヴの会得
- ジャズジャイアントたちの演奏のインプット
その中でも音楽理論は本当に奥深く学問として一生をかけるに値するものです。
先ほどの3つのうちの一つ、音楽理論の分野でジャズをジャズたらしめるのはずばりリハーモナイズ1とインプロヴァイズ2なわけですが、これがまた様々なバリエーションと解釈があり、全部を頭で覚えておくには難しいほどの膨大な情報量です。
そのため結果的にプレイヤーごとに基本的な型みたいなものがあると思います。私はあります。
例:
・■は本来20のパターンがあるけど私は4と16のパターンを基本的に使おう。
・▲はxxxxxの解釈が一般的かもしれないけど私はxxyxを基本にしよう。
上記のように「このときは基本的にはこう解釈しよう」とか、「この解釈を基準でいつもやっているけれど今回はあえて違う解釈でアドリブしよう」みたいなものがあり、どれを選ぶのか?いつそれを用いるのか?といった面がその人の個性や解釈につながっているのは多大にあるはずです。
私にも私なりのものがあり、ハンクジョーンズ3やトミフラ4を師とあがめてきた感覚から、少しでもそのエッセンスを取り入れようとしてきました。
今回は私自身が、作曲したりリハーモナイズしたりアドリブしたりするときに型としている音楽理論をあらためて「見える化」し、あとで自分で見返せる私に嬉しい資料庫として、または観て頂けた方の何かの参考になればという思いでまとめてみようと思います。
ジャズの理論って確かに基礎だけでもだいぶあるから、これから取り組む人だと全部覚えるの?!辛い!ってなるよな…
一応運営者のプレイスタイルは、パーカー以降の50年代ハードバップスタイルを目指してきたみたいだからその辺の参考資料としてつまんで頂く分には有意義かもしれないね!
ダイアトニックコードに対しての私のスケール解釈。
ダイアトニックにたいしての弾くスケールの解釈を書き出してみました。基本的に下記を型としています。これが頭に入っていると初見譜面でも何となく対策ができ、アドリブも弾けます。
属性 | コード | スケール |
---|---|---|
メジャー | ⅠM7 | イオニアン、リディアン |
ⅣM7 | リディアン | |
その他の♭系M7 | リディアン | |
その他の#系M7 | イオニアン | |
マイナー | Ⅱm7 | ドリアン |
Ⅲ7、Ⅵm7 | フリジアン、エオニアン | |
全部のm♭5 | 対応したロクリアン | |
ドミナントセブンス | Ⅴ7 | ミクソリディアン、オルタード、コンビネーションディミニッシュ、ホールトーン、リディアンドミナント7、ハーモニックマイナースケールP5ビロウダウン |
メジャー調でのⅡ7 | リディアンドミナント7 | |
マイナー調でのⅡ7 | オルタード | |
Ⅳ7 | リディアンドミナント7 | |
Ⅵ7 | オルタード、ハーモニックマイナースケールP5ビロウダウン | |
ドミナントaug7 | ホールトーン | |
何かしらのドミナントセブンス | リディアンドミナント7 |
私好みのダイアトニックコードに対するテンションノート選定。
ダイアトニックのに対しての基本的なテンションノートのピックアップを書き出してみました。もちろんすべてこれではないですがまず初めてのリードシート5を弾くときはここから始めてます。
- 下記表の度数は右手です。
- 左手は基本1 5 7 3を片手のみで抑えます。特訓して開くようにしました。かなり音数が多いですし、そもそもきつければ1と7などでもいいかもしれません。
コード | 度数 |
---|---|
ⅠM7 | 2 3 5 6 |
Ⅱm7 | 2 3 5 6 |
Ⅲm7 | 1 3 4 7 |
ⅣM7 | 2 3 4 6 |
Ⅴ7 | #2 ♭3 6 7 |
Ⅵm7 | 2 3 4 7 |
Ⅶm7‐5 | 3 4 -5 7 |
ノンダイアトニックのメジャーコード | 2 #4 6(例:CM7ならD/C) |
ノンダイアトニックのマイナーコード | ♭7 2 4(例:Cm7ならB♭/Cm) |
ノンダイアトニックの7コード | 6 ♭2 3(例:C7ならA/C7) 2 #4 6(例:C7ならD/C7) ♭7 2 4(例:C7ならB♭/C7) |
リハーモナイズや転調のために私がよく使うアイディア。
もともとあるコードに対しての置き換えや作曲の際にとりあえずやってみるアイディアを上げていきます。もちろん複合技もありなわけでして、その辺を言い始めると永遠に終われなくなりますので、あまり深追いせず一つずつの簡単な解釈を書いていこうと思います。
★Ⅱm7→Ⅴ7(トゥーファイブ)
Ⅱm7→Ⅴ7→Ⅰ6など。Ⅴ7の前にⅡm7を追加します。基本的にはドミナントモーションの装飾として発生した通称ニゴイチですね。なぜサブドミナントがⅣではなくⅡになったのかについては、1900年代初頭ではサブドミナントをあえてⅣMではなくⅡmでやるのが新しくてエモかったからだとかどこかで聞いた記憶があります。
★裏コードとトゥーファイブ化
Ⅱm7→♭Ⅱ7→Ⅰ6など。五度圏の反対側のドミナントセブンスに入れ替えろ!でおなじみの裏コードですが弾いてる人たちからすればⅡm半音下のセブンスコードやろ、みたいなとらえ方でむしろインスタントに使いやすいおなじみの技な印象です。これをトゥーファイブにして、Ⅱm7→♭Ⅵm7→♭Ⅱ7→ⅠM6なんて動きもよくある気がします。私はAll the Things You Are6でやります。
それからⅥ♭7→Ⅴ7→Ⅰ6のようにドミナントセブンス以外を裏コードとして置き換えることもよくします。またこれをよしとするとⅡm7→Ⅵ♭7→ Ⅴ7→Ⅱ♭7→Ⅰ6などもやれることに気づきます。
★セカンダリードミナントとトゥーファイブ化
Ⅲm7→Ⅵ7→Ⅱm7→Ⅴ7→Ⅰ6など。とりあえず弾く直前のコードの完全5度上のセブンスを挟む技であるセカンダリードミナントです。これも息をするように出てきますね。Ⅱm7をゴールに見立ててⅡから見たら2番目のⅢm7からはじめてダブルでトゥーファイブするイメージですね。
★スリップⅡm7→Ⅴ7
Ⅲ♭m7→Ⅵ♭7→Ⅱm7→Ⅴ7→Ⅰ6など。実際に弾くニゴイチの半音上か半音下でトゥーファイブをしてから普通のトゥーファイブをキメるやつです。譜割の関係上倍の速度でコードを処理する形になるので使うと進行感が増しますね。
★パッシングディミニッシュ
Ⅲ♭dim7→Ⅱm7→Ⅵ♭dim7→Ⅴ7→Ⅱ♭dim7→Ⅰ6など。コードチェンジの直前に3連符の3つ目くらいの短い感覚で半音上や下のディミニッシュコードを入れていくやつです。ネットだとジャズの定番技みたいに割となってる風の感じですが実際そんなやりますか?という印象でこればっかりだとなんか変です。(謎の辛辣)
★完全四度上昇
Ⅱm7→Ⅴ7→Ⅵ♭6→Ⅱ♭6→Ⅰ6など。エンディングや、穏やかな感じのイントロ(調の中でやる分にはトニック⇔サブドミナントの繰り返しですし)など作るときに使えます。
もっと伸ばしてⅡm7→Ⅴ7→Ⅵ♭6→Ⅱ♭6→Ⅴ♭6→Ⅶ6→Ⅰ6なども好きで息を吸うようにやります。
★サブドミナントマイナー
ⅣM7→Ⅳm7→Ⅲm7→Ⅵ7など。同主調からの借用和音を使うテクニックでⅡm7をⅡm7-5に、ⅣM7をⅣm7に、Ⅵm7をⅥ♭M7と入れ替えることを指してることがほとんどではないでしょうか?私はⅡm7→Ⅳm7→Ⅰ6は割とどこでもしてしまうくらい好きです。また、バックドアトゥーファイヴなるⅡm7→Ⅳm7→Ⅶ♭7→Ⅰ6というのもありますがこれもトゥーファイブ化しているわけですね。最後Ⅰ6の前にⅦ7で経過するのも忘れずに。
★Ⅴ♭m-5から半音下降
Ⅱm7→Ⅴ7→Ⅴ♭m-5→Ⅳm7→Ⅲm7→Ⅲ♭m7→Ⅱm7→Ⅱ♭7→Ⅰ6など。ジャズのエンディングでおなじみです。切りよく終わるなら上記ですし、割とゆっくり終わらせるならばⅡm7→Ⅴ7→Ⅴ♭m-5→Ⅳm7→Ⅲm7→Ⅲ♭m7→Ⅱm7→Ⅳm7→Ⅰ6とサブドミナントマイナーを最後のところに足します。
★主調を中心とした属調、下属調、平行調、同主調でのマッピング
様々な借用和音がどこから来るのかを考えるとものすごい膨大な情報と直面する必要が出てきます。ハーモニックマイナーとメロディックマイナーの借用和音以外は割と下記の中にあるのかもしれません。下記すべてから和音の借用が可能と考えると精神的負荷が軽くなりアナライズがだいぶ楽になります。これであなたは救われました。(多分)
主調
調の中心です。C調なら1はC。ⅤはGと普通の調性の世界です。
平行調
主調と使う鍵盤が同じマイナー調です。C調基準で見るならばAm調です。
同主調
調の基音が同じマイナー調です。C調基準で見るならばCm調です。
一般的にいうモーダルインターチェンジはここからの借用をさすことが多いと思います。
下属調
主調の基音から完全4度上を基音とする調です。C調基準で見るならばF調です。
下属調平行調
下属調と使う鍵盤が同じマイナー調です。C調基準で見るならばDm調です。
下属調同主調
下属調を基音とする調の基音が同じマイナー調です。C調基準で見るならばFm調です。
属調
主調の基音から完全5度上を基音とする調です。C調基準で見るならばG調です。
属調平行調
下属調と使う鍵盤が同じマイナー調です。C調基準で見るならばEm調です。
属調同主調
下属調を基音とする調の基音が同じマイナー調です。C調基準で見るならばGm調です。
平行調同主調
主調の平行調の同主調です。C調基準で見るならばA調です。
ダイアトニック的思考では一つの調には7つのコードがあるわけですから、これをもとに別の調性から借用することでかなりの数のノンダイアトニックコードの使える理屈が通るようになります。私はこれを知ってだいぶ精神的に解放されました。
お気づきの通りですが、たとえばCが基音だとして属調のGからさらに属調のD、さらに属調の…とやっていけば全部網羅でき、全部の調を回れて一周してしまうのでしまうので身も蓋もなくなってしまいます、
基本的に主調から見て借用する際のアイディアとしてと、自然な転調のためのトーナリティ旅行のためのガイドとしてみるといいかもしれません。
★長3度進行(コルトレーンチェンジ)
長3度先の調に転調していくジョンコルトレーン7が編み出したとされるコード進行です。トーナリティが変わっていくのでディグリーで表記できませんのでコードで表記すると、CM7→E♭7→A♭M7→B7→EM7のようになり赤いところが調3度で回り続けれて、その中でいろいろなリハーモナイズをしながら進んでいくような形のものです。トミフラもコルトレーンの伴奏時に苦しめられているのが録音に残っています。ですがさすがのトミフラで自身のアルバムで完璧に弾きこなしていました。職人すぎる。
★短3度進行
Dm(9 13)→Fm(9 13)→A♭m(9 13)→Bm(9 13)→Dm(9 13)など。短3度先のマイナーコードに進行していきまた戻ってこれるのでモードの曲などで使います。Dm(9 13)→A♭m(9 13)→Bm(9 13)→Dm(9 13)も使います。
★完全4度乗せ和音
和音を組むときに下から完全四度で積んでいきトップノートがメロになるようにすると、強い意志を感じる和音になります。トーナリティは無視してあくまでトップノート依存で完全4度で組むのが重要です。
★分数aug
Ⅴ7→Ⅱ♭aug7(9)→Ⅰ6など。通称ブラックアダーコードです。経過音を活用するコードとして使われている印象です。augで和音がホールトーンになるせいでふわっとします。
とりあえず今思いつくのはこの辺りまででした。ぬけがあれば付け加えておきます。
結構いろいろなことを癖づけてやっているんだな
やっぱりジャズは一日にしてならずだね!運営者はこの理論をシンセとくっつけてやってるあたり少し特殊なのかもね!
まとめ
自分で勝手にやったんだろご主人…
自分でもたまに忘れたときに見返せれるようにまとめたっていってるよ!笑
よかったら皆様も気になるところはつまんで頂いて、参考にしてあげてくださいね!°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°
私が買ってよかったなと思う音楽理論書を載せておきます。私の持ってるものがもう古くてないものもあるのでその場合はアップデート版を載せます。海外のジャズセオリーなどでかなりいいものは多いですが国内の理論書は微妙なものが多い中で私はこの2冊にはかなり救われました。ぜひ買って音楽理論を習得してみてはいかがでしょうか!
- 簡単に言うとコードの置き換えの事。 ↩︎
- 即興演奏の事。 ↩︎
- ジャズスタンダードを1000曲以上記憶していたと言われる(しかも1曲ごとに自由に調変更可能。)、ミスタースタンダードの異名を持つ、チャーリーパーカーがいる時代からプロの活動をしていたマジの生き字引。運営者は基本的にこの人にあこがれてピアノを弾いている。2010年5月16日に亡くなられた。運営者はこの日に必ず黙とうをしている。 ↩︎
- トミーフラナガン。運営者がピアノを始めるきっかけになったコンファメーションを演奏していた大恩人。名盤の影にトミフラありと言われ、実際ホーンのジャズ名盤のピアノへの起用率は異常。それだけ素晴らしい職人として認知されている。 ↩︎
- ジャズで使用する、譜割や進め方、メロディや簡易なコードのみ書かれた簡易的な譜面。 ↩︎
- 有名なジャズスタンダード楽曲。 ↩︎
- ジャズの巨人の一人。マイルスのもとで頑張りつつモンクに救われ開花し、自身の演奏に一生挑戦し続けた男というイメージ。菊池成孔先生がいつか話していたようにメンターがいるとかなりいい感じで運営者はモンクとの共演が一番好き。 ↩︎